2026年4月1日より、65歳の高齢者を対象とした肺炎球菌ワクチンの定期接種が、これまでのニューモバックス(PPSV23)から、新しい結合型ワクチンプレベナー20(PCV20)へと変更になりました。長年にわたって高齢者の肺炎予防を支えてきたニューモバックスに代わり、より長期的な免疫効果が期待できるワクチンが公費負担の対象となります。
このページでは、今回の変更の背景や各ワクチンの特徴・違い、新たに登場したキャップバックス(PCV21)との比較まで、わかりやすくご説明します。
肺炎球菌感染症とは?高齢者に特に注意が必要な理由
肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)は、健康な方の鼻やのどにも常在している細菌ですが、加齢や基礎疾患により免疫力が低下すると、重篤な感染症を引き起こすことがあります。代表的な疾患として、肺炎・髄膜炎・菌血症・中耳炎などがあり、特に侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)は生命を脅かす可能性があります。
肺炎は現在も日本人の主要な死亡原因の一つであり、肺炎で亡くなる方の大多数が65歳以上の高齢者です。肺炎球菌は成人の肺炎原因菌のなかでも最も頻度が高く、ワクチンによる予防が強く推奨されています。
特にリスクが高い方:
- 65歳以上の高齢者
- 心臓病・腎臓病・慢性呼吸器疾患をお持ちの方
- 糖尿病・肝疾患のある方
- HIV等による免疫機能低下のある方
2026年4月の制度変更:ニューモバックスからプレベナー20へ
〜2026年3月31日まで(旧制度)
65歳を対象とした高齢者肺炎球菌ワクチンの定期接種では、ニューモバックス(PPSV23)が使用されてきました。自己負担は約4,300円。効果の持続が約5年のため、5年ごとの再接種が必要でした。
2026年4月1日〜(新制度)
定期接種ワクチンがプレベナー20(PCV20)に変更されました。結合型ワクチンのため免疫記憶が形成されやすく、生涯1回の接種で原則として追加接種は不要とされています。
変更のポイント
- 定期接種ワクチンが多糖体ワクチン(PPSV23)から結合型ワクチン(PCV20)に変更
- 結合型ワクチンは免疫記憶を形成しやすく、1回の接種で長期保護が期待できる
- 追加接種(再接種)は原則不要で、生涯1回の接種で済む見通し
- ニューモバックスは定期接種の対象外となり、2026年4月以降の接種は全額自己負担
定期接種の対象者(2026年4月以降)
- 接種年度に65歳になる方(誕生日から翌誕生日前日まで)
- 60〜64歳で、心臓・腎臓・呼吸器の機能に重大な障害がある方(身体障害者手帳1級相当)
- 60〜64歳で、HIVによる免疫機能に重大な障害がある方
※定期接種は生涯1回限りです。2026年3月31日までにニューモバックスを定期接種として受けた方は、プレベナー20を定期接種として受けることはできません。その場合は任意接種(全額自己負担)となります。
※福岡市の自己負担額は5,900円(自治体の補助制度適用後)です。詳細はお住まいの区の保健福祉センター健康課へご確認ください。
肺炎球菌ワクチンの種類と基本的な仕組み
肺炎球菌ワクチンは大きく2種類に分類されます。それぞれの仕組みを理解することがワクチン選択の第一歩です。
多糖体ワクチン(PPSV)
肺炎球菌の表面を覆う「莢膜(きょうまく)多糖体」を抗原として用いたワクチンです。多くの血清型(最大23価)をカバーできる一方で、免疫記憶(メモリーB細胞)が形成されにくいという特性があります。そのため効果の持続期間が約5年と短く、定期的な再接種が必要でした。代表製品はニューモバックスNP(PPSV23)です。
結合型ワクチン(PCV)
莢膜多糖体にキャリアタンパクを化学的に結合させることで、T細胞を介した免疫応答を誘導するワクチンです。免疫記憶が形成されやすく、1回の接種で長期にわたる保護効果が期待できます。現在、日本で使用できる主な結合型ワクチンは以下のとおりです。
- プレベナー20(PCV20):ファイザー社製、20価、2026年4月から高齢者定期接種に採用
- キャップバックス(PCV21):MSD社製、21価、2025年10月発売、任意接種のみ
- バクニュバンス(PCV15):MSD社製、15価、任意接種または一部定期接種
ワクチン比較:ニューモバックス・プレベナー20・キャップバックス
現在、高齢者が選択できる主要な肺炎球菌ワクチンは3種類です。それぞれの特徴を整理します。
| 項目 | ニューモバックス(PPSV23) | プレベナー20(PCV20) | キャップバックス(PCV21) |
|---|---|---|---|
| 製造会社 | MSD社 | ファイザー社 | MSD社 |
| ワクチンの種類 | 多糖体ワクチン(PPSV) | 結合型ワクチン(PCV) | 結合型ワクチン(PCV) |
| カバーする血清型数 | 23種類 | 20種類 | 21種類 |
| 免疫記憶の形成 | 形成されにくい | 形成されやすい | 形成されやすい |
| 効果の持続 | 約5年(再接種が必要) | 長期持続(原則1回で完了) | 長期持続(原則1回で完了) |
| 2026年4月以降の接種区分 | 任意接種(全額自己負担) | 定期接種(公費負担) | 任意接種(全額自己負担) |
| 高齢者肺炎球菌性肺炎に対する血清型カバー率 | 65〜68% | 約43%(国内2019〜2022年データ) | 約72%(国内2019〜2022年データ) |
| 自己負担の目安(福岡市) | 任意接種時:約8,000〜9,000円 | 定期接種:5,900円(自治体補助後)/任意接種時:約12,000〜15,000円 | 約13,000〜15,000円 |
| 発売・承認年 | 長年使用実績あり | 2023年(日本承認) | 2025年8月承認、10月発売 |
※血清型カバー率のデータは、日本呼吸器学会・日本感染症学会・日本ワクチン学会の合同ステートメント「65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方(第7版、2025年9月30日改訂)」に基づきます。
プレベナー20(PCV20)の特徴と接種の考え方
プレベナー20は、ファイザー社が開発した20価の肺炎球菌結合型ワクチンです。かつて使用されていたプレベナー13(PCV13)を基盤として、7種類の血清型(8型・10A型・11A型・12F型・15B型・22F型・33F型)が追加されました。
結合型ワクチンの最大の特徴は、免疫記憶(メモリーB細胞)が形成される点にあります。この仕組みにより、ニューモバックスと比べて免疫の持続期間が長く、現時点では追加接種(再接種)は原則として不要とされています。生涯1回の接種で済む可能性が高く、通院負担を大きく軽減できる点も大きなメリットです。
すでに小児の定期接種にも採用されており(2024年10月〜)、安全性・有効性の基礎データが積み重ねられています。高齢者においても、日本における主要な肺炎球菌血清型のカバーがニューモバックスと同水準であることが確認されています。
ニューモバックスをすでに接種済みの方へ
2026年3月末までにニューモバックスを定期接種として受けた方は、プレベナー20を定期接種として受けることはできません。ただし、ニューモバックス接種から1年以上の間隔を空けることで、任意接種としてプレベナー20またはキャップバックスを接種することが可能です。合同ステートメント(第7版)では、PPSV23再接種は原則として選択肢としないことが明記されており、次のワクチン接種を検討する方はかかりつけ医にご相談ください。
キャップバックス(PCV21)とは?プレベナー20との違い
キャップバックス(PCV21)は、MSD社が開発した21価肺炎球菌結合型ワクチンです。2025年8月に国内で薬事承認を取得し、同年10月29日に発売されました。定期接種(2026年4月〜)のプレベナー20よりも新しいワクチンで、現時点では任意接種(全額自己負担)のみとなっています。
高齢者特化の設計
キャップバックスは、従来のワクチンとはコンセプトが異なります。高齢者で特に問題となる血清型を重点的にカバーするよう設計されており、日本の高齢者における肺炎球菌性肺炎の血清型カバー率は約72%(2019〜2022年データ)で、プレベナー20(約43%)を大きく上回っています。侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)においても、65歳以上でのカバー率はおおむね80%前後と報告されています。
ただし、キャップバックスは2026年4月の定期接種には間に合わなかったため、公費負担の対象外です。将来的な定期接種への組み込みを期待する声もありますが、現時点では未定です。
プレベナー20とキャップバックス、どちらを選ぶか
両ワクチンの安全性・免疫原性に大きな差は認められておらず、いずれも免疫記憶を形成し、長期的な保護が期待できます。選択の主な判断軸は以下のとおりです。
- 65歳で定期接種を希望する場合:プレベナー20(PCV20)が公費負担(福岡市自己負担5,900円)で受けられます
- コストよりも広いカバー率を重視する場合:自費でキャップバックス(PCV21)を検討することも選択肢のひとつです
- すでにニューモバックスを接種済みの場合:1年以上の間隔を空けてから任意接種でプレベナー20またはキャップバックスを検討(かかりつけ医にご相談ください)
ご自身の接種歴・健康状態・費用負担の観点から、担当医師と相談のうえ最適なワクチンをご選択ください。
接種スケジュールの考え方(接種歴別)
パターン①:ニューモバックス未接種の65歳の方
2026年4月以降に65歳を迎える方は、定期接種としてプレベナー20(PCV20)を1回接種することが推奨されます。福岡市での自己負担は5,900円(自治体補助後)。追加接種は原則不要です。
パターン②:ニューモバックスをすでに定期接種で受けた方
プレベナー20を定期接種として受けることはできません。ニューモバックス接種から1年以上の間隔を空けて、任意接種としてプレベナー20またはキャップバックスを接種することが選択肢となります。合同ステートメント(第7版)では、PPSV23の再接種は原則として選択肢としないことが明記されています。
パターン③:65歳未満で接種を希望する方(任意接種)
定期接種の対象ではないため、全額自己負担となります。かかりつけ医にご相談のうえ、ご自身の状況に合ったワクチンをお選びください。基礎疾患をお持ちの方は積極的な接種が勧められています。
よくあるご質問
Q. 2026年4月から肺炎球菌ワクチンの定期接種は何が変わりましたか?
2026年4月1日から、65歳高齢者を対象とした肺炎球菌ワクチンの定期接種(公費負担)が、ニューモバックスNP(PPSV23・多糖体ワクチン)からプレベナー20(PCV20・結合型ワクチン)に変更されました。プレベナー20は免疫記憶が形成されやすく、生涯1回の接種で原則追加不要とされています。
Q. プレベナー20の定期接種は何回受けられますか?
高齢者の定期接種は生涯1回限りです。定期接種として一度受けると、それ以降は任意接種(全額自己負担)となります。
Q. 福岡市でのプレベナー20定期接種の自己負担額はいくらですか?
福岡市では自治体の補助制度適用後、自己負担額は5,900円です。任意接種(自費)の場合は約12,000〜15,000円が目安ですが、医療機関によって異なります。
Q. ニューモバックスをすでに接種済みの場合、プレベナー20の定期接種は受けられますか?
2026年3月31日までにニューモバックスを定期接種として受けた方は、プレベナー20を定期接種として受けることはできません。ただし、ニューモバックス接種から1年以上の間隔を空けることで、任意接種(全額自己負担)としてプレベナー20またはキャップバックスを接種することは可能です。かかりつけ医にご相談ください。
Q. キャップバックス(PCV21)とプレベナー20は何が違いますか?
キャップバックス(PCV21)はMSD社製の21価肺炎球菌結合型ワクチンで、2025年10月に日本で発売されました。高齢者で問題となりやすい血清型を重点的にカバーするよう設計されており、高齢者肺炎球菌性肺炎に対する血清型カバー率は約72%(国内データ)で、プレベナー20(約43%)を上回ります。ただし現時点では定期接種対象外で、全額自己負担の任意接種のみです。
Q. 2026年4月以降にニューモバックスを接種した場合の費用はどうなりますか?
2026年4月1日以降にニューモバックスを接種した場合は定期接種の対象外となり、全額自己負担(約8,000〜9,000円)となります。また合同ステートメント第7版(2025年9月)ではPPSV23の再接種は原則として選択肢としないことが明記されています。
Q. プレベナー20の定期接種の対象年齢は何歳ですか?
定期接種の対象は、接種年度に65歳になる方(誕生日から翌誕生日前日まで)です。また60〜64歳で心臓・腎臓・呼吸器の機能またはHIVによる免疫機能に身体障害者手帳1級相当の障害がある方も対象となります。それ以外の年齢の方は任意接種(全額自己負担)となります。
Q. 以前にプレベナー13(PCV13)を受けた場合はどうなりますか?
プレベナー13はすでに国内販売が終了しています。プレベナー13の接種歴がある場合に定期接種の対象外となるかどうかは自治体の判断によります。かかりつけ医またはお住まいの市区町村にご確認ください。
Q. 肺炎になったことがあっても定期接種を受けられますか?
はい、過去に肺炎や肺炎球菌感染症にかかったことがある方でも、定期接種の対象となります。
Q. 接種後の副反応はありますか?
いずれのワクチンでも、注射部位の痛み・腫れ・発赤などの局所反応が生じる場合があります。発熱や倦怠感が現れることもありますが、通常は数日以内に改善します。重篤な副反応は極めてまれです。接種後に気になる症状が続く場合は、接種を受けた医療機関にご相談ください。
まとめ
2026年4月から、高齢者の肺炎球菌ワクチン定期接種がプレベナー20(PCV20)に変更されました。この変更は、より長期的な免疫保護を実現する結合型ワクチンの登場と、国際的な医療基準の進化を踏まえたものです。
ニューモバックスは5年ごとの再接種が必要でしたが、プレベナー20は原則として生涯1回の接種で済むため、通院負担を大幅に軽減できると期待されています。福岡市では自治体補助制度により自己負担5,900円で受けられます。また、任意接種として選択できるキャップバックス(PCV21)は、高齢者特化の設計で血清型カバー率がさらに高く、費用よりも広い予防効果を求める方には選択肢となります。
65歳の定期接種の機会は生涯1回です。ご自身の接種歴を確認のうえ、ぜひかかりつけ医にご相談ください。
接種のご相談・ご予約
当院では肺炎球菌ワクチンの定期接種・任意接種に対応しております。接種歴の確認、どのワクチンが適しているかのご相談もお気軽にどうぞ。
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参考情報
- 厚生労働省「肺炎球菌感染症(高齢者)」
- 福岡市「令和8年度 高齢者の肺炎球菌定期予防接種について」
- 日本呼吸器学会・日本感染症学会・日本ワクチン学会「65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方(第7版、2025年9月30日改訂)」
- 独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)各ワクチン添付文書
※本ページの内容は2026年4月時点の情報に基づいています。制度・費用は変更される場合がありますので、最新情報はお住まいの区の保健福祉センター健康課または当院へお問い合わせください。
※本ページは特定のワクチンや製薬会社を推奨するものではありません。接種に際しては必ずかかりつけ医にご相談ください。

