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加熱式たばこと電子たばこは何が違う?仕組み・ニコチン・健康への影響を医師が解説

近年、加熱式たばこや電子たばこを使う方が増え、「普通のたばこと何が違うの?」「ニコチンは入っている?」「健康への影響はどのくらい?」といったご質問を受ける機会が増えています。

どちらも火を使わない製品ですが、加熱するものやニコチンの有無、体への影響については違いがあります。また、紙巻きたばこより負担が少ないのでは、と感じる方もいるかもしれませんが、分かっていることと、まだ研究途中のことがあります。

この記事では、加熱式たばこと電子たばこの基本的な違いを、できるだけ分かりやすく解説します。すでに使用している方にも、禁煙や減煙を考えている方にも、今後の選択を考える際の参考になれば幸いです。(1)(2)


加熱式たばこと電子たばこの違い

加熱式たばこ電子たばこ(VAPEなど)
加熱するものたばこ葉・加工たばこリキッド(液体)
主な仕組みたばこを燃やさず加熱し、発生したエアロゾルを吸入するリキッドを電気で加熱し、発生したエアロゾルを吸入する
ニコチン原則として含まれる国内で販売される製品は原則ニコチンを含まない。ただし個人輸入品などには含有製品がある
代表的な製品IQOS、glo、PloomなどVAPE、リキッド式電子たばこなど
健康への影響ニコチン依存や有害化学物質への曝露があり、長期影響は未確立ニコチンの有無にかかわらず有害物質への曝露があり、長期影響は未確立

加熱式たばこは「燃やさないたばこ」、電子たばこは「液体を加熱する製品」と考えるとわかりやすいでしょう。加熱式たばこは、乾燥または再構成したたばこ葉を加熱してニコチンを含むエアロゾルを生じる、れっきとしたたばこ製品です。(1)(3)(4)(7)

電子たばこは、通常プロピレングリコール、グリセリン、香料などを含むリキッドを電気的に加熱し、エアロゾルを発生させます。たばこ葉そのものは使用しない点が、加熱式たばことの大きな違いです。(2)(5)

なお、目に見えるものを「水蒸気」と呼ぶことがありますが、医学的には単なる水蒸気ではなく、微粒子や化学物質を含むエアロゾルです。(2)(3)


ニコチンと依存性

加熱式たばこは、たばこ葉を加熱してニコチンを発生させるため、紙巻きたばこと同様にニコチン依存を起こします。ニコチンは強い依存性を持ち、心拍数や血圧を上昇させ、血管にも影響します。(1)(3)(6)

厚生労働省では、製品ごとに1本あたりのニコチン量に幅があるものの、IQOSなどの加熱式たばこスティックからは紙巻きたばこと同程度のニコチンが検出されることが報告されています。(7)(8)(9)

日本で一般に販売されている電子たばこ用リキッド(国内メーカー製)には、原則としてニコチンは含まれていません。しかし、海外から個人輸入したリキッドなどにはニコチン含有製品があり、表示と実際の成分が一致しない可能性にも注意が必要です。(2)(5)(10)

ニコチンが入っていなくても、加熱によって生じる化学物質や香料成分による健康影響が懸念されます。特に若年者、妊娠中・授乳中の方、これまで喫煙習慣のない方は、ニコチンを含む製品はもちろん、電子たばこを新たに始めることに医学的なメリットはありません。(1)(2)(3)


健康への影響は?

加熱式たばこも電子たばこも、紙巻きたばこのようにたばこ葉を高温で燃焼させないため、一部の有害化学物質への曝露は少ないかもしれません。しかし、これは必ずしも安全であるというわけではありません。両方ともエアロゾルに発がん性物質や心肺への影響が懸念される化学物質が含まれています。(1)(2)(6)(8)

加熱式たばこの健康リスク

WHOによる文章でも、紙巻きタバコから加熱式たばこへ切り替えると、一部の発がん物質への曝露が減少するとは言われています。ただし、すべての有害物質が減るわけではなく、健康リスクがどれほど減るかについては長期的なデータが不足しています。(1)

系統的レビュー・メタ解析では、紙巻きたばこから加熱式たばこへ完全に切り替えた場合、一部の有害物質への曝露バイオマーカーで低下が報告されています。燃焼により生じる一酸化炭素への曝露は減る可能性があり、血液中の一酸化炭素ヘモグロビン(COHb)は、その曝露をみる指標の一つです。ただし、COHbが下がることだけで、将来の心臓・肺の病気やがんのリスク低下まで証明されたわけではありません。

心筋梗塞、脳卒中、COPD、がん、死亡といった重要な長期アウトカムが実際にどれほど減るかについては、現時点では確実な証拠はありません。明確に健康リスクを下げると判断するのには、根拠が不足しています。(1)(8)

電子たばこの健康リスク

WHOは、電子たばこのエアロゾルにニコチンを含むほか、微小粒子、金属成分、カルボニル化合物など、多数の健康影響が懸念される物質が含まれるとしています。(2)

紙巻きたばこ由来の有害物質曝露が減る可能性はあるものの、電子たばこを使用することでの健康上の利益はないようです。(13)

また、電子たばこ使用者は、呼吸器症状(咳、喘鳴、息切れ)が生じるとともに心血管指標への影響も懸念されています。長期使用によるCOPD、心血管疾患、がんとの関連はまだ十分には分かっていません。国内の調査研究でも、若年層の使用や健康不安に関するデータが蓄積されつつあります。(10)


紙巻きたばことの併用はリスクを減らす?

紙巻きたばこと加熱式たばこ・電子たばこを併用する方は少なくありません。しかし、紙巻きたばこの本数を少し減らして別の製品を加えるだけでは、有害物質への曝露を十分に減らせない可能性があります。(1)(8)

紙巻きたばこを続けながら別の製品を併用しているかどうかは、健康リスク低減の指標にはなりません。健康リスクを減らす際に比較すべきなのは、紙巻きたばこを完全にやめられたかどうかです。WHOも、加熱式たばこや電子たばこが禁煙の代替となりうるかについて慎重な姿勢を示しており、二重使用や長期使用によるリスク低減が十分に検証されていないとしています。(1)(2)

また、加熱式たばこや電子たばこへ切り替えた後も、ニコチン依存そのものは続くことがあります。禁煙できたと考えていても、実際には依存する製品が変わっただけというケースもあります。


禁煙を考えている方へ

海外のCochraneレビューでは、ニコチンを含む電子たばこが、禁煙率を高める可能性が示されています。(14)

この結果は主に海外のデータのため、日本国内ではまだ電子たばこを標準的な禁煙治療として推奨されていません。日本では、医師の管理下での禁煙治療として、ニコチンパッチや内服薬などが保険診療で利用可能です。

禁煙の目標は、紙巻きたばこを別の製品に置き換えることではなく、たばこ製品とニコチン依存から離れることです。ご自身だけで難しい場合は、禁煙外来でニコチン依存度を評価し、禁煙補助薬や行動支援を組み合わせる方法をご相談ください。

当院では、患者さん一人ひとりの生活背景やニコチン依存の程度に合わせて、禁煙のサポートを行っています。加熱式たばこや電子たばこについて気になる点があれば、受診時に遠慮なくご相談ください。


参考文献

  1. World Health Organization. Heated tobacco products: summary of research and evidence of health impacts. 2023.
    https://iris.who.int/bitstream/handle/10665/368022/9789240042490-eng.pdf?sequence=1
  2. World Health Organization. Tobacco: E-cigarettes (Q&A).
    https://www.who.int/news-room/questions-and-answers/item/tobacco-e-cigarettes
  3. Centers for Disease Control and Prevention (CDC). Heated Tobacco Products.
    https://www.cdc.gov/tobacco/other-tobacco-products/heated-tobacco-products.html
  4. U.S. Food and Drug Administration (FDA). How are non-combusted cigarettes, sometimes called heat-not-burn products, different from e-cigarettes and cigarettes?
    https://www.fda.gov/tobacco-products/products-ingredients-components/how-are-non-combusted-cigarettes-sometimes-called-heat-not-burn-products-different-e-cigarettes-and
  5. 厚生労働省 e-ヘルスネット「電子たばこ」
    https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/dictionary/tobacco/yt-059.html
  6. 厚生労働省 e-ヘルスネット「加熱式たばこの健康影響」
    https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/information/tobacco/t-02-008.html
  7. 厚生労働省「加熱式たばこに関するこれまでの知見の整理」
    https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001702386.pdf
  8. 国立保健医療科学院「加熱式たばこ製品の有害性について」
    https://www.niph.go.jp/journal/data/69-2/202069020008.pdf
  9. 厚生労働科学研究「加熱式たばこなど新たなたばこ製品の成分分析と受動喫煙」
    https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/2019/192031/201909036A_upload/201909036A0003.pdf
  10. 厚生労働科学研究「電子たばこ使用に関する調査研究のレビュー」
    https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/2019/192031/201909021A_upload/201909021A0013.pdf
  11. Braznell S, et al. Impact of heated tobacco products on biomarkers of potential harm and adverse events: a systematic review and meta-analysis. 2025.
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40300839/
  12. Shahab L, et al. Harm reduction associated with heated tobacco products: A systematic review and meta-analysis. 2025.
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39867766/
  13. Izquierdo-Condoy JS, et al. Direct health implications of e-cigarette use: a systematic review. 2024.
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39135931/
  14. Lindson N, et al. Electronic cigarettes for smoking cessation. Cochrane Database Syst Rev. 2025.
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39878158/

呼吸器内科の受診予約

加熱式たばこ・電子タバコに関するご不安、禁煙を検討されている方は 呼吸器内科 にお気軽にご相談ください。症状や状況をお聞きしながら、適切な治療法をご提案します。

監修: 院長 平田 慎治(日本呼吸器学会 呼吸器専門医・日本内科学会 総合内科専門医・肺がんCT検診認定医師)

最終更新: 2026 年 8 月 6 日

本ページの情報は一般的な医学情報であり、個別の診断・治療を保証するものではありません。症状の判断は必ず医師の診察を受けてください。治療内容(吸入薬・在宅酸素療法・薬物療法など)は呼吸機能や全身状態をもとに医師が判断します。自己判断による薬剤の中断・変更は危険ですので、必ず医師にご相談ください。