科学的根拠に基づくがん予防法「5+1」とは|2026年改訂版のポイントを解説
日本人の2人に1人ががんになると言われていますが、実はがんの多くが生活習慣の見直しで予防できることをご存じでしょうか。国立がん研究センターが長期追跡調査をもとに推計したところ、日本人男性のがんの43.4%、女性の25.3%が、喫煙・飲酒・食事・身体活動・体重・感染という6つの要因によって引き起こされていました。
この6つの要因への対策をまとめたものが「科学的根拠に基づく日本人のためのがん予防法(5+1)」です。2026年6月3日、国立がん研究センターはこの基準を最新の研究結果に合わせて改訂しました。この記事では、5+1の中身と、今回の改訂で何が変わったのかを解説します。
がん予防法「5+1」とはどのような考え方か
5+1とは、改善できる5つの生活習慣(たばこ・お酒・食生活・身体活動・体重)に、生活習慣では防ぎきれない「感染」への対策をプラス1として加えた、6本柱の予防法を指します。
国立がん研究センターの多目的コホート研究(JPHC Study)によると、この5つの生活習慣すべてを実践していた人は、まったく実践していなかった人と比べて、男性で43%、女性で37%、がんになるリスクが低かったそうです。1つでも当てはまる項目から取り組むだけで、リスクを下げられる可能性があります。
たばこを吸わないことがなぜ重要なのか
5+1の中でも、がんとの関連が最も強く示されているのがたばこです。喫煙者本人だけでなく、周囲の人が煙を吸い込む受動喫煙によっても、肺がんなどのリスクが上がることがわかっています。禁煙は、開始した時点からリスクを下げられる数少ない対策のひとつです。
お酒はどのくらいまでなら安全なのか
2026年の改訂で、最も表現が変わったのがお酒に関する項目です。これまでは「節酒する」という表現でしたが、改訂後は「飲酒をひかえる」に変更されました。少量の飲酒であってもがんのリスクが上昇することを示す研究結果が積み重なってきたためです。
これまでは適量を守れば問題ないという印象を持たれがちでしたが、今回の改訂はその考え方を修正するものと言えます。お酒を飲む習慣がある方は、量を減らす方向で見直すことをおすすめします。
食生活で何を意識すればよいか
食生活については、次の3点が推奨されています。
- 塩分を控える(1日あたり男性7.5g未満、女性6.5g未満が目安)
- 野菜を1日350g以上、果物を200g程度とる
- 熱い飲食物は少し冷ましてから口にする
塩分の摂りすぎは胃がんとの関連が指摘されており、野菜・果物の摂取は複数のがんのリスク低下と関連することが報告されています。熱い状態での飲食を避けるのは、食道の粘膜への繰り返しの刺激を減らすためです。
身体活動はどの程度必要か
激しい運動を新たに始める必要はありません。通勤や家事、買い物などで体を動かす時間を増やし、日常生活の中でできるだけ活動的に過ごすことが推奨されています。座っている時間が長い生活は、それ自体ががんのリスク要因になり得ると考えられています。
体重(BMI)はどの範囲を目指せばよいか
体重についても、今回の改訂で基準が変わりました。これまでは男性BMI 21〜27、女性BMI 21〜25と男女で異なる基準でしたが、改訂後は男女ともにBMI 21〜25に統一されています。BMIが高くなるほど段階的にリスクが上がるがんがあることを踏まえた見直しです。
痩せすぎもリスク要因になり得るため、目指すのは「低ければ低いほど良い」ではなく、この範囲におさまる体重の維持ということになります。
感染対策として何をすればよいか
「プラス1」にあたるのが感染対策です。生活習慣だけでは防ぎきれない感染症由来のがんに対して、次の対策が推奨されています。
- B型肝炎ウイルスワクチン接種(0歳児が対象)
- ピロリ菌の検査と、陽性だった場合の除菌治療
- HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチン接種(小学6年生から高校1年生相当の女子が対象)
肝炎ウイルスは肝臓がん、ピロリ菌は胃がん、HPVは子宮頸がんと、それぞれ関連が明らかになっています。当院では、消化器内視鏡専門医による胃カメラなどによりピロリ菌の有無を診断することや、ピロリ菌の除菌療法を行うことが出来ます。B型肝炎ワクチンや、子宮頸がんワクチンの接種もおこなっておりますので、お気軽にお問い合わせ下さい。
まとめ
がん予防法「5+1」は、たばこ・お酒・食生活・身体活動・体重という5つの生活習慣と、感染対策を合わせた6本柱です。2026年の改訂では、お酒の推奨表現が「節酒」から「ひかえる」へ、体重の基準が男女ともBMI21〜25へと、より厳しい方向に見直されました。
ここで紹介した数字は、あくまで集団を対象にした統計上の推計です。5+1を実践したからといって、がんにならないと保証されるわけではありません。それでも、できるところから少しずつ取り入れていくことが、がん予防の第一歩になります。
参考文献
- 国立がん研究センター プレスリリース「科学的根拠に基づくがん予防法5+1をより伝わりやすく刷新」(2026年6月3日)
- 国立がん研究センター がん情報サービス「科学的根拠に基づくがん予防法」
- 国立がん研究センター がん対策研究所「がん予防法の提示」2026年5月26日改訂版