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CPAPのレンタルと購入、どちらを選べばいい?費用・メリット・デメリットをわかりやすく解説

南條内科の呼吸器内科にも多くの方が通っていただいていますが、今回は、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治療として広く用いられているCPAP(シーパップ)療法についてのお話です。「毎月の費用を抑えたい」「通院が大変」といった理由から、自分でCPAPを購入することを検討される方もいらっしゃいます。

この記事では、保険診療でのレンタルと自費での購入を費用・手続き・医療的な観点から整理してみます。どちらが「正解」かではなく、それぞれの特徴を正しく理解したうえで、主治医と相談しながら選んでいただければと思います。

制度情報について:本記事の診療報酬・保険適用基準は2026年6月時点の情報をもとにしています。制度は改定されることがありますので、最新情報は受診先の医療機関にご確認ください。


CPAPとはどんな治療法か

CPAPは、就寝中に鼻や口にマスクを装着し、気道に空気を送り続けることで無呼吸を防ぐ機器です。睡眠時無呼吸症候群の治療法のひとつであり、一定の条件を満たす場合に健康保険が適用されます。


保険適用の条件(2026年6月時点)

CPAPに健康保険が適用されるには、検査の結果が一定基準以上である必要があります。

検査の種類保険適用の目安(AHI)
簡易検査(ポリグラフ)30以上
精密検査(PSG)15以上

※AHI(無呼吸低呼吸指数)とは、1時間あたりの無呼吸・低呼吸の回数を示す指標です。

2026年6月の診療報酬改定により、上記の基準がそれまでより緩和されました。これまで保険適用の対象外だった方が、改めて検査を受けることで対象になる可能性があります。以前「基準に満たない」と言われた方は、一度かかりつけ医にご相談ください。


保険診療でのレンタル:費用の目安と仕組み

月額費用の目安

保険診療でCPAPを使用する場合、機器は医療機関を通じてレンタルするかたちになります(2026年6月時点)。

自己負担割合月額費用の目安
3割負担4,200〜5,000円程度
2割負担2,800〜3,300円程度
1割負担1,400〜1,700円程度

※診察料・指導管理料・機器レンタル料を含む目安です。医療機関や加算の有無によって異なります。


自費でのCPAP購入:費用の目安と注意点

購入費用の目安

保険診療外で個人がCPAPを購入する場合の費用は、本体・マスク・備品を含めて15万〜40万円程度が目安とされています(機種によって幅があります)。

5年間のコストを単純計算すると、月4,500円のレンタルであれば5年間で約27万円。CPAPの購入費が20万円程度の場合、4〜5年を境に費用が逆転する計算になります。ただし、消耗品(マスク・フィルター等)の交換費用は別途かかります。さらに、レンタル品なら4年程度で新しいものへの交換がサービスに含まれていることが多く、消耗品のランニングコストもサービスに含まれる場合があるため、長期的にみてもレンタルがお勧めです。

※この計算はあくまで目安です。使用年数・消耗品費・機種・負担割合によって大きく変わります。

購入の特徴

メリット

  • 長期間使用した場合、費用が抑えられる可能性がある
  • 旅行・出張への持ち運びが自由になりやすい
  • 自分で選んだ機種を使える

デメリット

  • 初期費用が高い
  • 機器の使用状況を医師が確認する仕組みがなくなるため、治療効果が落ちていても気づきにくい
  • 故障・消耗品交換の対応は基本的に自己責任になる
  • 自己判断での使用となるため、設定が適切かどうかの確認が難しい

費用だけで判断しないために:医学的フォローの重要性

レンタルと購入の比較で費用に注目しがちですが、CPAPは使い続けることと、定期的な医師の管理があって初めて治療として機能します。

医師の定期的なフォローには、次のような意義があります。

  • AHIや機器データの確認:気道の状態は変化するため、定期的なデータ確認が治療効果の維持につながります
  • マスクフィットの見直し:マスクが合わなくなると、意図せず治療効果が低下していることがあります
  • 体重変化・加齢への対応:体重の増減や加齢によって、必要な設定が変わることがあります
  • 他の疾患との関連確認:睡眠時無呼吸症候群は、高血圧[1][2]・糖尿病[5]・脂質異常症[6]・心血管イベント[3][4]などと関連することが知られており、継続的なフォローが重要です

自費購入を検討される場合でも、定期的に医師の診察を受け続けていただければと思います。購入後も受診を続けられる環境があるか、かかりつけ医に事前に確認しておくと安心ですね。


CPAPと全身疾患リスク:主なエビデンス

CPAPによる治療継続が、睡眠の質改善にとどまらず、全身疾患の予防・改善に寄与する可能性が複数の研究で示されています。

高血圧への影響

ランダム化比較試験およびメタ解析により、CPAP治療の継続が収縮期・拡張期血圧をわずかながら有意に低下させることが示されています[1][2]。特に夜間高血圧や、降圧薬に反応しにくい治療抵抗性高血圧を持つSAS患者では、CPAPの追加が血圧管理に寄与する可能性があります。

心血管イベントへの影響

長期観察研究において、CPAP未治療の重症SASは心筋梗塞・脳卒中などの心血管イベントリスクの上昇と関連することが報告されています[3]。一方、心血管疾患を既に持つ患者を対象としたSAVE試験では、CPAP群と対照群で主要心血管イベントの発生率に統計的有意差は認められませんでした[4]。CPAPの一次予防・二次予防における効果については、現時点でも研究が継続されています。

糖尿病・インスリン抵抗性への影響

Sleep Heart Health Studyなどの大規模研究において、睡眠時無呼吸の重症度と耐糖能障害・インスリン抵抗性との関連が示されています[5]。CPAP治療がインスリン感受性の改善に寄与する可能性も報告されていますが、血糖コントロールへの直接的な影響についてはさらなる検証が進んでいる段階です。

脂質異常症・動脈硬化への影響

SASによる間欠的低酸素が酸化ストレスを介してLDL酸化を促進し、動脈硬化の進行に寄与するとされています。CPAP治療による酸化LDL低下や頸動脈内膜中膜複合体(IMT)の進行抑制が観察研究で示されています[6]


まとめ:選択の前に確認しておきたいこと

  • 保険適用の条件を満たしているかどうかは、検査結果と医師の判断によります
  • 費用の逆転点はあくまで目安であり、個人の状況によって異なります
  • どちらを選んでも、定期的な医師によるフォローは治療の継続に欠かせません
  • 制度は改定されることがあります。最新の情報は受診先にご確認ください

迷われたときは、主治医に「自分の場合はどちらが向いていますか?」と気軽に聞いてみるのが、一番の近道かもしれません。


自己チェック表:主治医に相談する前に確認しましょう

受診前にこれらを確認しておくと、相談がスムーズに進みますよ。

現状の確認

  • ☐ 直近のAHI(無呼吸低呼吸指数)を知っている
  • ☐ 現在の月1回通院をどのくらい続けられているか把握している
  • ☐ CPAPの使用時間(1晩あたり)をおおよそ把握している
  • ☐ マスクのフィット感や使用上の不快感がないか確認している

費用の確認

  • ☐ 自分の健康保険の自己負担割合(1割・2割・3割)を確認している
  • ☐ 現在の月額費用(レンタルの場合)を把握している
  • ☐ 購入を検討している場合、消耗品代も含めた長期費用を試算した

本記事の情報は2026年6月時点のものです。診療報酬・保険適用基準は今後変更される場合があります。個別の治療方針・費用については、必ず受診先の医療機関にご確認ください。


参考文献

  1. Pepperell JCT, et al. Ambulatory blood pressure after therapeutic and subtherapeutic nasal continuous positive airway pressure for obstructive sleep apnoea: a randomised parallel trial. Lancet. 2002;359(9302):204-210.
  2. Bazzano LA, et al. Effect of nocturnal nasal continuous positive airway pressure on blood pressure in obstructive sleep apnea: a meta-analysis. Hypertension. 2007;50(2):417-423.
  3. Marin JM, et al. Long-term cardiovascular outcomes in men with obstructive sleep apnoea-hypopnoea with or without treatment with continuous positive airway pressure: an observational study. Lancet. 2005;365(9464):1046-1053.
  4. McEvoy RD, et al.; SAVE Investigators and Coordinators. CPAP for prevention of cardiovascular events in obstructive sleep apnea. N Engl J Med. 2016;375(10):919-931.
  5. Punjabi NM, et al. Sleep-disordered breathing, glucose intolerance, and insulin resistance: the Sleep Heart Health Study. Am J Epidemiol. 2004;160(6):521-530.
  6. Drager LF, et al. Effects of CPAP on early signs of atherosclerosis in obstructive sleep apnea. Am J Respir Crit Care Med. 2007;176(7):706-712.